製造業における部品点数削減は、効率性とコスト削減を両立させる重要な設計手法です。単に部品数を減らすだけでなく、製造工程の効率化や品質の安定化、さらには製品の信頼性向上までを含む、総合的な設計改善アプローチとして注目されています。
3Dプリンターによる一体化造形などの先進技術を取り入れることで、製品の構造を最適化し、軽量化・工程削減・環境負荷低減といった多角的なメリットを実現できます。
この手法は、新規設計品の立ち上げはもちろん、既製品の見直しや改良においても効果を発揮します。特に3Dプリントとの相性が良いため、従来の加工技術では実現が難しかった一体構造の具現化を通じて、企業の競争力を引き上げる武器となります。

1. 部品点数削減の基本と目的

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部品点数削減は、製造業が抱えるコスト増や工数の増大といった課題を根本から見直す設計手法として注目されています。過剰な部品分割は、製造・組立の煩雑化を招くだけでなく、保守や品質管理の観点からもデメリットが生じやすくなります。そこで、部品点数を抑えることにより、製品の構造を見直し、製造・管理の最適化を図ることが目的とされます。

1-1. なぜ部品点数を減らすのか?背景と狙い

製品開発の現場では、「短納期対応」「現場負荷の軽減」「在庫コストの抑制」といった要望が年々高まっています。部品数が多いと、それに伴う管理・製造・アセンブリのコストが増加します。部品点数を削減することで、これらのコストを大幅に削減できる可能性があります。また、部品数の削減は製品の信頼性向上にも寄与します。部品数が少ないほど、故障のリスクも減少します。さらに、少ない部品での設計は、製品のコンパクト化や軽量化にもつながり、輸送コストの削減やエネルギー効率の向上といった付随的なメリットも生み出します。
さらに、部品点数削減は製品の生産性向上に大きく寄与します。部品点数が少ないことで、在庫管理がシンプルになり、サプライチェーンの効率化が図れます。これにより、企業は在庫リスクを最小限に抑え、資金の効率的な運用が可能となります。部品点数削減は、製品の設計から生産、流通に至るまで、全てのプロセスにおいて効率を高めるための鍵となります。

1-2. 部品点数削減によって得られる主なメリット(コスト・品質・工数)

以下に、部品点数削減によって得られる代表的なメリットを整理します。

部品点数削減によって得られる主なメリット(コスト・品質・工数)

部品数を減らすことで得られるメリットは多岐にわたります。まず、材料費や加工・組立工数の削減により直接的なコストメリットが生まれます。次に、構成がシンプルになることで組立誤差や部品不良が発生しにくくなり、品質の安定化につながります。また、部品点数が少ないほど検査や在庫管理の工程も削減され、製造リードタイムの短縮や人員配置の最適化といった間接的な効率化も実現されます。
さらに、部品点数削減は製品の耐久性や信頼性を向上させるだけでなく、環境への配慮にもつながります。部品数が減少することで、製造時に必要なエネルギーや資源の使用量が削減されます。これにより、企業は環境負荷を低減し、持続可能な製造プロセスを実現することができます。また、部品点数削減は、製品のリサイクル性を向上させることにも寄与し、循環型社会の実現に向けた取り組みを推進するものです。

2. 設計段階でできる部品点数削減のアプローチ

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部品点数の最適化は、製造現場の工夫だけでは実現できません。最も大きな影響を与えるのは、やはり設計段階における意識と判断です。設計の初期段階から「どの機能を統合できるか」「どこまで一体化すべきか」を検討することで、後工程の効率化につながります。

2-1. 機能統合設計とは

機能統合設計とは、本来複数の部品に分かれていた役割を、一部品に集約する手法です。たとえば、保持・位置決め・ガイド・カバーといった機能をひとつの構造体にまとめることで、部品の削減だけでなく、組立や検査の簡略化にもつながります。この考え方は設計初期から取り入れることで、より自然な形での統合設計が可能になります。
機能統合設計を成功させるためには、設計者が製品の全体像を把握し、各機能の統合がどのように製品の性能や信頼性に影響を与えるかを十分に理解することが求められます。これにより、製品の差別化を図りつつ、コストと品質のバランスを最適化することが可能です。設計意図を明確にしつつ、製造性・保守性も両立させることがポイントです。

2-2. モジュール設計と一体化形状の考え方

モジュール設計は、製品を機能単位で分割し、ユニットごとに設計・製造・管理を行う方式です。これにより、設計変更への柔軟な対応や、メンテナンス時の部分交換が容易になります。加えて、形状的にまとめられる部位については一体化を検討することで、部品数を減らしながら構造の安定化や工程の合理化を図ることができます。 モジュール設計は、グローバル製造にも対応しやすく、パーツの標準化が進む中で、コスト削減と品質向上の両立を目指す企業にとって重要な戦略となっています。3Dプリントなどの工法を活用すれば、モジュール単位での一体化造形も可能になります。組立が不要となるだけでなく、精度や強度の安定化も期待できます。

2-3. CADやCAEを活用した最適設計

3D CADやCAEなどの設計支援ツールは、部品点数削減のための試行錯誤を効率化するうえで非常に有効です。これらのツールを活用することで、設計の初期段階から最適な部品配置や形状をシミュレーションし、最終的な製品の性能を予測することができます。これにより、設計の試行錯誤を繰り返すことなく、効率的に最良の設計を導き出すことが可能です。
CADやCAEを用いることで、設計段階でのミスを未然に防ぎ、試作段階でのコストや時間の削減が可能となります。これにより、製品開発のリードタイムを短縮し、迅速な市場投入を実現します。さらに、これらのツールは、設計の柔軟性を高め、新しいアイデアや技術を積極的に取り入れるための基盤を提供します。CADやCAEの積極的な活用は、製品の競争力を維持し、イノベーションを促進するための重要な鍵となります。

3. 3Dプリンターを活用した部品点数削減の可能性

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近年、3Dプリント技術の進化により、部品点数削減のアプローチにも大きな変化が生まれています。従来の加工技術では実現が難しかった一体成形や複雑形状が、設計通りに造形できるようになったことで、統合設計がより現実的な選択肢となりました。

3-1. 一体成形による部品統合

3Dプリンターを活用すれば、これまで分割・組立が前提だった構造を一括して造形することが可能となります。多方向から応力がかかる構造や、内部に複雑な空間を持つ部品も、接合部なしで一体化できるため、従来の製造プロセスでは難しかった複雑な形状の製品を作成することができ、組立工数の削減と耐久性の向上が同時に実現します。
3Dプリンターの導入は、製品開発のリードタイムを短縮し、プロトタイプの迅速な制作を可能にします。これにより、市場投入までの期間が短縮され、競争優位性を確保するための重要な手段となります。
一体成形は、設計の自由度を大幅に向上させ、革新的な製品の創造を可能にします。これにより、企業は新しい市場やニーズに迅速に対応し、製品の競争力を高めることができます。3Dプリンターの活用は、製造業の未来を切り開くためのカギとなり、製品の開発から製造まで、全てのプロセスにおいて革新をもたらします。

3-2. 3Dプリントと従来加工の違い ― 分割設計 vs 一体化設計

従来の加工法では、複数の部品を組み合わせることで製品を完成させることが一般的でしたが、3Dプリンターを使用することで一体化が可能になります。これにより、接合部の強度が向上し、全体の耐久性が増します。また、組立時間も短縮されます。3Dプリント技術は、製造プロセスの柔軟性を高め、カスタマイズされた製品の生産を容易にします。これは、消費者ニーズの多様化に対応するための重要な要素であり、付加価値のある製品提供に貢献します。

一体化による製品設計は、製造プロセスの効率化を促進し、企業の競争力を向上させるための強力な手段です。また、3Dプリンターの活用は、製品の試作段階でのコスト削減にも寄与し、迅速な市場投入を支援します。これにより、企業は市場の変化に迅速に対応し、競争力を維持することが可能となります。 3Dプリントでは、従来なら不可能だった形状も一体化で造形できるため、部品数を削減するうえでの有力な選択肢となります。ただし、サイズや材料の制約もあるため、個別の設計に応じた対応が求められます。

分割設計と一体化設計の比較(工数・精度・設計制限)
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4. 部品点数削減の注意点と失敗例

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部品点数削減は数々のメリットをもたらす一方で、設計判断を誤ると後戻りが難しく、かえってコストや手間が増大してしまうリスクもあります。特に、すべてを一体化すれば良いといった短絡的な判断や、保守性を軽視した設計は、実運用時のトラブルの原因となることも。ここでは、設計者が注意すべき落とし穴と、その回避ポイントを紹介します。

4-1. 保守性や交換性とのバランス

部品点数を減らすことに固執すると、保守や交換のしやすさが犠牲になることがあります。設計段階でのバランスが求められ、部品を統合しすぎると、故障が発生した際の修理が困難になります。特に、摩耗や消耗が想定される部位まで統合してしまうと、故障時に全体の交換が必要になることが多く、保守性の低下・コスト増となるリスクがあります。このため、部品点数削減においては、機能性とメンテナンス性のバランスを慎重に検討し、「統合すべき部位」と「分割すべき部位」を判断することが重要です。これはメンテナンス性の観点からも重要です。

4-2. コスト削減が逆に高コスト化するケース

部品点数を減らした結果、材料の歩留まりが悪化したり、特殊な加工が必要になったりするケースもあります。特に、特殊な材料や複雑な一体化設計は、コスト増につながる可能性があるため、注意が必要です。設計変更が製造プロセス全体に及ぼす影響を考慮し、コスト対効果を十分に検討することが求められます。
設計変更がもたらすコスト増を防ぐためには、製造工程全体の見直しが不可欠です。これにより、製造プロセスの効率化を図り、製品の競争力を維持することが可能となります。

5. よくある質問(FAQ)

  • 部品点数削減はどのような製品に向いていますか?
    機械構造部品や筐体部品、ブラケットなど、構造や機能の重複がある部品群は特に削減効果が大きく、向いています。また、カスタム品が多く標準化が進みにくい分野でも、一体化設計による部品点数削減が有効です。
  • 一体化設計にすると、修理やメンテナンスは不便になりませんか?
    設計次第では修理性が低下するリスクがありますが、交換頻度の高い部位をあえて分割するなどの工夫で回避可能です。この点は「4-1. 保守性や交換性とのバランス」でも詳しく解説していますので、あわせてご確認ください。
  • 3Dプリントによる一体化は量産にも対応できますか?
    対応可能ですが、適切な材料選定と造形方式の選択が必要です。中ロットまでは特に有効で、金型レスでの展開が可能なため、量産前の試作や限定生産には大きなメリットがあります。

6. まとめ|部品点数削減は設計と製造の連携がカギ

部品点数削減は、単なるコスト削減の手法ではなく、製品そのものの価値を高めるための重要な戦略です。設計者と製造者が連携し、最適な設計を追求することで、品質とコストの両面でメリットを享受できます。今後の製造業の未来を見据えながら、部品点数削減の可能性を最大限に引き出すことが求められます。部品点数削減の成功は、企業全体のイノベーションを促進し、持続可能な発展に寄与するものです。設計と製造の密接な連携は、競争力を維持し、変化する市場ニーズに柔軟に対応するための鍵となります。

弊社では、3Dプリントを活用した一体化設計、造形支援、試作支援などを通じて、部品点数削減に取り組む企業様をサポートしています。図面のブラッシュアップや造形の試作検証などを通じて、お客様の課題に即した具体的な提案を行います。お気軽にご相談ください。

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