2025.11.27
【3Dプリンター】粉末床溶融結合方式(PBF)とは?樹脂から金属まで造形できる3Dプリンターの仕組みと主要方式を徹底解説
粉末床溶融結合方式(PBF:Powder Bed Fusion)は産業用3Dプリンターの中心的な方式として注目を集めています。特に高精度と高強度を両立できる点から単なる試作の枠を超え、最終製品の製造プロセスにも活用が広がっているのが特徴です。
比較的一般的なFDM/FFF(熱溶解積層方式)やSLA/DLP(光造形方式)と比べると、金属部品の製造に対応できることが大きな強みであり、樹脂系でもサポート材をほとんど必要としないため、ラティス構造やアセンブリ一体構造といった高度な設計も容易に実現できます。その結果、航空宇宙や医療、自動車など、高性能・軽量化が求められる分野で導入が加速しています。
さらに、粉末をベースとした製造は材料の再利用性が高く、廃材を減らせる点でも評価されています。環境負荷を抑えつつ高付加価値部品を製造できることから、次世代の持続可能なものづくりを支える技術として期待されています。

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目次
1. 粉末床溶融結合方式(PBF:Powder Bed Fusion)の概要と造形プロセス

粉末床溶融結合(PBF:Powder Bed Fusion)は粉末状の材料を層ごとに熱源で選択的に溶融・結合し、積み重ねて造形する3Dプリント方式です。レーザーや電子ビームを用いることで、樹脂から金属まで幅広い材料を扱えるのが特徴で、工業分野では金属加工の代替や少量生産の手段のひとつとして注目されています。
造形の流れは次のようになります。
- 粉末をリコーターやローラーで造形エリアに均一に敷く
- レーザーや電子ビームを照射し、必要部分を溶融・選択的に結合
- 造形テーブルをわずかに下降させ、再び粉末を敷く
- この工程を繰り返し、立体形状を積層
完成後、余分な粉末を除去し、未溶融の粉末は回収します。回収した粉末に一定割合の新粉末を混合して使用することで、品質の安定性を確保しています。この仕組みにより、高精度・高強度で複雑な形状や内部構造を持つ部品を効率的に製造できるのです。
2. 各方式の特徴と違い
粉末床溶融結合方式(PBF)は、粉末層に熱エネルギーを照射して溶融・焼結させる方式で、熱源や材料の違いによって複数の方式に分かれます。樹脂を焼結する「樹脂系」と、金属粉末を溶融する「金属系」に大別され、それぞれで用途や性能が異なります。樹脂系はサポート構造を必要とせず複雑形状に強く、軽量部品や試作品に適しています。金属系は高密度・高強度で、鋳造や機械加工では困難な軽量化構造(中空構造・ラティス構造)も実現できます。以下では代表方式ごとに特徴と適した用途を解説します。
| 区分 | 方式 | 熱源 | 主な材料 |
|---|---|---|---|
| 樹脂系 | SLS(レーザー焼結) | レーザー | ナイロン(PA11/12)、TPU |
| MJF(マルチジェット融合) | 赤外線 +インクジェット剤 | ナイロン系粉末 | |
| 金属系 | SLM(レーザー溶融) ※DMLS含む | 高出力レーザー | ステンレス鋼、アルミニウム合金、 チタン合金 |
| EBM(電子ビーム溶融) | 電子ビーム(真空環境) | チタン合金など |
2-1. 樹脂系粉末床溶融結合
樹脂系PBFは、ナイロンなどの樹脂粉末を熱エネルギーで焼結して造形する方式で、粉末自体が支持材の役割を果たすためサポート材不要で複雑形状に強い点が特徴です。軽量かつ実用レベルの強度を持つ部品を造形でき、試作・治具・外装・小ロット部品まで幅広い用途に適しています。代表方式であるSLSは材料の豊富さと安定した品質から広く普及し、MJFは造形速度や表面均一性に優れ、生産性を重視した用途に採用されています。
2-1-1. SLS(Selective Laser Sintering:レーザー焼結法)
SLSは、ナイロン(PA11/PA12)やTPUなどの樹脂粉末にレーザーを照射し、局所的に焼結させて造形する方式です。材料特性は耐熱性・耐衝撃性・柔軟性のバランスに優れ、機能試作から実用品の小ロット生産まで幅広く対応できます。また粉末が造形時に全体を支えるため中空構造や複雑形状の造形が容易で、特に一体化設計が求められる部品で高い自由度を発揮します。再現性や寸法精度も高く、治具や筐体部品など実務的な用途で多く採用されています。樹脂系PBFの中でも最も普及している代表的な方式です。
2-1-2. MJF(Multi Jet Fusion:マルチジェット融合法)
MJFはHPが開発した粉末床溶融結合方式で、粉末層にインクジェットで「吸収剤」と「ディテール剤」を塗布し、赤外線で一括溶融させる仕組みを持ちます。このプロセスにより、SLSよりも高速で均質な造形が可能となり、生産性に優れる点が大きな特徴です。また表面が比較的滑らかで、色の一体感が強いことから外観確認・評価用途にも適しています。さらにフルカラー造形に対応する機種も存在し、カスタムパーツや教育用途にも幅広く利用されています。材料は主にPA12を中心としたナイロン系で、実用部品として十分な強度と耐久性を備えています。
2-2. 金属系粉末床溶融結合
金属系PBFは、ステンレス鋼、アルミニウム、マルエージング鋼、チタン合金などの金属粉末を溶融して造形する方式です。造形物は高密度に仕上がり、材料によっては鋳造品に匹敵する強度を得ることができます。金属加工では困難な中空構造やラティス構造による軽量化が可能で、航空宇宙、医療、産業機械など高性能が求められる領域で活用が進んでいます。レーザー方式のSLMは精度・材料対応の広さが強みで、電子ビーム方式のEBMは高温造形による形状安定性に優れています。
2-2-1. SLM(Selective Laser Melting:レーザー溶融法)
SLMは高出力レーザーによって金属粉末を完全に溶融し、層状に固めて部品を造形する方式です。造形物は高密度で、鋳造品に匹敵する強度・疲労特性を持つため最終部品として利用されます。ステンレス鋼、アルミニウム、マルエージング鋼、チタンなど対応材料が多い点も強みで、精密な機械部品や金型部品の製造に広く採用されています。なお、DMLS(Direct Metal Laser Sintering:直接金属レーザー焼結法)はEOS社が使用する方式名で、技術的にはSLMと同じく完全溶融方式に分類されます。名称に“焼結”の語が残っていますが、現行装置ではほぼSLMと同義で扱われます。
2-2-2. EBM(Electron Beam Melting:電子ビーム溶融法)
EBMは真空中で電子ビームを照射し、金属粉末を高温で溶融させる方式です。造形エリア全体が高温に保持されるため、層ごとの温度差が小さく、造形途中での反りやゆがみが発生しにくい点が特徴です。特に酸化しやすい金属に適しており、チタン合金の造形で高い適性を発揮します。また真空環境で造形されるため、酸化による欠陥が抑えられ、生体適合性が求められる部品製造にも利用されています。一方、レーザー方式に比べて表面の粗さが大きく、精細形状の造形には向きませんが、安定した高温環境を利用できることから、熱負荷の高い部品や大型構造物の造形に適した方式です。
金属系粉末床溶融結合では、目的に応じてSLMとEBMを使い分けます。SLMは表面品質や細部の再現性に優れ、ステンレス鋼やアルミなど幅広い材料に対応するため、精度や外観が重要となる部品で適性が高く、一般的な機械要素や金型にも用いられます。一方、EBMは高温環境で造形することで反りが抑えられ、特にチタン合金のように熱影響を受けやすい材料や、大型構造物で安定した造形が求められる場面に向いています。精密性や材料の多様さを求めるならSLM、安定性や高温領域の性能を重視するならEBMが選ばれる傾向にあります。
3. 導入・設置時の注意点

粉末床溶融結合(PBF)方式の3Dプリンターは、高精度かつ高強度な造形が可能である一方で、導入や設置の際には特有の注意点があります。特に、装置が大型化しやすく、使用する材料が微細な粉末であることから、安全性や設置環境に十分配慮する必要があります。
| 注意点 | 内容 | 対応策 |
|---|---|---|
| 粉塵爆発リスク | 樹脂粉末(特にナイロン系)が空気中に舞うと爆発の危険あり | 防爆仕様の設備導入、換気システム整備、防護具の着用 |
| 設置環境 | 金属系PBFは高出力電源・真空環境を必要とする場合あり、大型装置で重量も大きい | クリーンルームや防爆対応エリアの確保、床耐荷重やスペースの事前確認 |
| 粉末管理 | 未溶融粉末の回収・保管が必須。再利用には品質低下のリスクあり | バージン粉末との適切な混合比率を維持し、定期的な品質チェック |
| メンテ ナンス | サポート除去・表面仕上げ・熱処理など後工程が多い | 専用の後処理装置・作業体制を準備し、コストを事前に見積もる |
4. まとめ
粉末床溶融結合(PBF:Powder Bed Fusion)は、樹脂と金属の双方に対応できる産業向け3Dプリント方式であり、精密かつ高強度な造形を実現できる点が大きな特徴です。造形物は粉末に支えられて形成されるためサポート材が少なくて済み、複雑な形状や内部構造にも柔軟に対応できます。そのため、航空宇宙産業における軽量部品、医療分野でのインプラント、製造業での治具や少量生産など、幅広い分野で活用が進んでいます。
導入時には材料特性や装置構成、運用コストなどを総合的に比較し、自社の製造プロセスに最適な方式を検討することが大切です。

当社では、樹脂・金属の双方に対応した3Dプリントサービスを提供しており、試作から機能部品の少量製造まで柔軟に支援しています。造形方式の選定やデータ準備などについてもお気軽にご相談いただけます。お問い合わせはこちらからご連絡ください。
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