今回ご紹介する事例は、金星北見ハイヤー様のタクシー車両(トヨタ シエンタ)におけるカーナビ設置を実現するために製作した「専用取付台」です。
タクシーでは運行上、料金メーターを見やすい位置に設置する必要があり、その影響でナビを通常の中央位置に配置できない場合があります。今回もまさにそのケースで、中央部をメーター用に確保する必要がありました。
そこで運転席右側のドリンクホルダー部を活用し、3Dプリント技術で専用の台座を設計・製作しました。

制作の背景と課題

ご相談は、次のようなものでした。
「中央部のナビ取付位置に料金メーターを設置したいため、カーナビを別の場所に取り付けられないか?」
候補となったのは運転席右側のドリンクホルダー部。しかし、そのままでは以下の課題がありました。

  • ドリンクホルダー形状のままではカーナビを安定して設置できない
  • 車両専用の形状に合わせた部品が必要
  • 限られたスペースで確実にカーナビを保持できる構造を検討する必要がある

解決アプローチ|3Dスキャンとデータ設計

まず、ドリンクホルダー部周辺を3Dスキャナで計測し、ドリンクホルダー部の形状をデータ化しました。そのデータを基に以下のような設計を行いました。

  • ドリンクホルダーの上から“蓋”をかぶせるような構造
  • 蓋の上部に平面を設け、カーナビが安定して置ける台座を形成
  • ドリンクホルダー部にフィットする形状とし、接着により確実に固定できる仕様

造形品と取付状態

設計データをABS樹脂で3Dプリントし、実車両に装着して確認しました。ドリンクホルダー部にぴったり収まり、走行中の振動でも安定して保持できる仕上がりです。運転席からの視認性も確保でき、料金メーターの配置条件を満たしつつ、安全な運行を妨げない形となりました。

3Dプリント活用によるメリット

今回のように、特定の車両や運用に合わせた専用要件がある場合には、既製品では対応が難しいケースが多くあります。3Dプリントを活用することで、

  • 車種ごとにフィットする専用部品の製作が可能
    3Dスキャンや設計データを活用し、ドリンクホルダー部の形状に合わせて高精度に造形できるため、車両との一体感が生まれます。
  • 金型不要で1個から製作できる
    従来の金型製作では初期費用がかかるため、少量生産では採算が合いませんが、3Dプリントなら試作段階から低コストで着手できます。
  • 改良・再設計を繰り返しやすく短期間で最適化できる
    実際の使用感を確認しながら素早く形状を修正でき、現場の要望を反映した最適解を短納期で提供できます。

といったメリットを実現できました。

本事例から見る3Dプリント活用のヒント

本事例はタクシー車両向けのカーナビ取付台ですが、同じ考え方はさまざまな業界に応用可能です。

  • 車両や設備の一部を利用した専用台座やブラケット製作
    既存構造を活かしながら設置スペースを有効活用でき、配線や操作性も改善可能です。
  • 既製品では対応できない特殊配置の解決
    特殊な業務機器や狭い空間にも合わせられるため、現場作業の効率化につながります。
  • 現場の要望を即座に形にする試作・小ロット対応
    現物合わせの検討を短期間で繰り返せるので、製品化や改善サイクルを加速できます。

現場で求められる“痒いところに手が届く部品”を、3Dプリントは現実的なコストと短納期で実現できます。

お問い合わせ

今回の事例は、タクシー車両という特殊な要件に応じたカスタム設計ですが、同様の考え方は業務車両や産業設備にも広く応用可能です。少量製作・特注対応・短納期での部品製作をご検討の際は、ぜひ弊社にご相談ください。

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