2025.10.1
設備更新の進め方とは?補助金の活用法から注意点まで徹底解説
工場の生産性や安全性に直結する「設備更新」。老朽化した設備を使い続けることのリスクは認識しつつも、「何から手をつければ良いのか」「費用はどれくらいかかるのか」といった悩みから、なかなか一歩を踏み出せない担当者の方も多いのではないでしょうか。この記事では、設備更新の目的や適切なタイミング、具体的な進め方までを分かりやすく解説します。さらに、コスト負担を軽減する補助金の活用法や、失敗しないための注意点も紹介しますので、ぜひ計画の参考にしてください。

当社では、設備更新に関連する部品製作やリバースエンジニアリングを含む3Dプリントサービスを提供しています。詳しくは[サービス紹介ページ]をご覧ください。
目次
1. 設備更新とは?目的と重要性を解説
設備更新とは、単に古くなった設備を新しいものに入れ替える作業だけを指すのではありません。企業の生産性、品質、コスト、そして従業員の安全性といった、事業の根幹に関わる重要な経営判断です。最新の設備を導入することにより、企業は市場での競争力を高め、持続的な成長を遂げることが可能になります。
1-1. 生産性の向上と品質の安定化
最新の設備は、旧式のものと比較して処理速度や精度が格段に向上しています。これにより、生産量が向上するだけでなく、製品の品質も安定します。 不良率の減少は、材料の無駄をなくし、顧客満足度の向上にも直結するため、企業の信頼性を高める上で非常に重要です。
1-2. ランニングコストの削減と省エネ
新しい設備は、エネルギー効率が大幅に改善されていることが多く、電力消費量を抑えることができます。これは、日々のランニングコスト削減に直接的な効果をもたらします。 また、省エネ性能の高い設備を導入することは、企業の環境負荷を低減させ、企業の社会的責任(CSR)活動の一環としても評価されます。
比較項目 | 旧式設備 | 最新設備 |
---|---|---|
エネルギー効率 | 低い | 高い |
電力消費量 | 多い | 少ない |
ランニングコスト | 高い | 低い |
環境負荷 | 大きい | 小さい |
1-3. 従業員の安全性確保と労働環境の改善
老朽化した設備は、予期せぬ事故を引き起こすリスクをはらんでいます。最新の設備には、高度な安全装置が標準装備されていることが多く、従業員がより安全な環境で作業できるようになります。また、操作性の向上や騒音・振動の低減は、従業員の身体的負担を軽減し、労働環境の改善とモチベーション向上にも繋がります。
2. 設備更新を検討すべき3つのタイミング

設備更新は、計画的に行うことが成功の鍵です。突発的な故障による場当たり的な対応は、余計なコストや生産停止期間を招きかねません。ここでは、更新を検討すべき代表的な3つのタイミングについて解説します。
2-1. 法定耐用年数が近づいている
設備には、税法上で定められた「法定耐用年数」が存在します。これは、その資産を使用できる期間として法的に見積もられた年数であり、減価償却費を計算する際の基準となります。耐用年数が近づいている、あるいは超過している設備は、物理的な劣化が進んでいる可能性が高く、更新の重要な指標となります。
2-2. 故障や不具合が頻発している
設備の故障率が明らかに上昇し、修理の頻度やコストが増加している場合は、更新を検討すべき明確なサインです。 特に、修理に必要な部品の供給が終了している(生産中止になっている)場合、一度の故障が致命的となり、長期間の生産停止に陥るリスクがあります。 そのような事態を避けるためにも、早めの判断が求められます。特に部品の供給が終了している場合は、更新を見据えた代替手段の検討が欠かせません。詳しくは「代替部品の正しい選び方」の記事もあわせてご覧ください。
3-3. 旧式化により競争力が低下している
技術革新のスピードは速く、数年前に導入した設備でも、現在では旧式化している可能性があります。競合他社がより高性能な設備を導入して生産性や品質を向上させている場合、自社の競争力は相対的に低下してしまいます。市場の動向や新しい技術の情報を常に収集し、自社の設備が陳腐化していないか定期的に見直すことが重要です。
3. 設備更新の進め方を5つのステップで紹介
設備更新を成功させるためには、計画的なアプローチが不可欠です。ここでは、現状把握から導入後の効果測定まで、具体的な5つのステップに分けて、その進め方を紹介します。
ステップ1:現状設備の課題を洗い出す
まずは、現在使用している設備の現状を正確に把握することから始めます。稼働率、故障履歴、修理コスト、生産能力、品質データなどを収集し、「生産性が低い」「エネルギーコストが高い」「安全面に不安がある」といった具体的な課題をリストアップします。この課題の明確化が、後の設備選定の重要な基準となります。
課題の中には「部品の入手が困難」「修理が長期化する」といったものもあります。こうした場合は、リバースエンジニアリングによって部品形状を再現し、3Dプリントで代替製作する方法が有効です。こうしたアプローチについては「リバースエンジニアリングとは?」の記事で詳しく解説しています。
ステップ2:更新計画の策定と情報収集
洗い出した課題をもとに、設備更新の目的を明確にします。例えば、「生産量を20%向上させる」「電力消費量を30%削減する」といった具体的な目標を設定します。その上で、目標を達成できる最新の設備について、メーカーのウェブサイト、展示会、業界専門誌などを通じて情報収集を行います。
ステップ3:業者選定と見積もりの取得
情報収集で得たリストをもとに、複数の業者に問い合わせ、提案と見積もりを依頼します。この際、単に価格だけで判断するのではなく、提案内容が自社の課題解決に合致しているか、導入実績は豊富か、アフターサポートは充実しているか、といった点を総合的に評価することが重要です。
業者選定のポイント | 確認事項の例 |
---|---|
提案内容 | 課題解決への貢献度、費用対効果 |
実績 | 同業種への導入事例、企業の信頼性 |
価格 | 本体価格、設置費用、オプション料金 |
サポート体制 | 保守契約の内容、緊急時の対応 |
ステップ4:設備の導入と稼働テスト
契約する業者が決まったら、具体的な導入スケジュールを調整します。生産への影響を最小限に抑えるため、休業日や生産計画の閑散期を利用して設置工事を行うのが一般的です。設置後は、必ず稼働テストを行い、仕様通りの性能が出るか、不具合はないかを確認します。また、従業員への操作トレーニングもこの段階で実施します。
ステップ5:導入後の効果測定と保守運用
設備が本稼働を開始したら、事前に設定した目標(生産性、コストなど)が達成できているか、定期的に効果測定を行います。データを分析し、改善点があれば運用方法を見直します。また、設備の性能を長期的に維持するためには、メーカーが推奨する定期的なメンテナンスが欠かせません。保守契約に基づき、計画的な保守運用を行いましょう。
4. 設備更新で活用できる補助金・助成金

設備更新には多額の投資が必要となりますが、国や自治体が提供する補助金・助成金を活用することで、その負担を大幅に軽減できる可能性があります。公募期間や要件が定められているため、事前の情報収集が重要です。
4-1. 国が実施する代表的な補助金制度
国は、中小企業の生産性向上や省エネルギー化を支援するため、様々な補助金制度を用意しています。代表的なものに「ものづくり補助金」や「事業再構築補助金」、「省エネルギー投資促進支援事業費補助金」などがあります。これらの制度は、革新的な製品・サービス開発や、省エネ性能の高い設備導入にかかる経費の一部を補助するものです。
【参考】
トップページ|ものづくり補助事業公式ホームページ ものづくり補助金総合サイト
トップページ | 事業再構築補助金
ⅢⅣ事業|省エネ設備への更新支援(省エネ・非化石転換補助金)
4-2. 自治体独自の補助金制度の探し方
国の制度に加えて、各都道府県や市区町村が独自に補助金・助成金制度を設けている場合も多くあります。これらの情報は、事業所が所在する自治体のウェブサイトや、中小企業支援機関のポータルサイト(例:J-Net21)などで確認できます。自社の条件に合った制度がないか、積極的に探してみましょう。
【参考】
支援情報ヘッドライン | J-Net21[中小企業ビジネス支援サイト]
ミラサポplus 補助金・助成金 中小企業支援サイト|経済産業省 中小企業庁
4-3. 補助金申請の注意点とポイント
補助金の申請には、事業計画書の作成など、多くの手間と時間が必要です。公募要領を熟読し、申請要件や補助対象となる経費を正確に理解することが不可欠です。また、多くの場合、補助金の交付決定前に契約・発注した設備は対象外となるため、必ずスケジュールを確認してから手続きを進めるようにしてください。
補助金活用のポイント | 具体的なアクション |
---|---|
情報収集 | 国や自治体のウェブサイトを定期的に確認する |
要件確認 | 公募要領を熟読し、自社が対象となるか確認する |
計画策定 | 補助金の目的と合致した事業計画書を作成する |
スケジュール管理 | 申請締切や事業期間を厳守する |
また、3Dプリントによる部品製作は、小ロット対応や短納期調達が可能なため、省エネや生産性向上に資する取り組みとして補助金対象となる場合があります。申請時には事例に応じた活用可能性を検討しましょう。
5. 設備更新の費用と資金調達の方法
設備更新における最大の課題の一つが、資金調達です。ここでは、費用の内訳と、自己資金以外の資金調達方法について解説します。
5-1. 設備更新にかかる費用の内訳
設備更新にかかる費用は、設備の本体価格だけではありません。既存設備の撤去費用、新しい設備の運搬・設置費用、配管や電気工事などの付帯工事費、そして導入後の保守費用など、様々なコストが発生します。見積もりを取得する際は、これらの費用がすべて含まれているか、総額でいくらになるのかを確認することが重要です。
5-2. リースやレンタルという選択肢
初期投資を抑えたい場合には、リースやレンタルを利用するのも有効な手段です。リースは、リース会社が購入した設備を長期間賃借する契約で、月々のリース料を経費として処理できます。一方、レンタルは比較的短期間の利用に適しています。技術革新が早い設備や、一時的にしか使用しない設備の場合にメリットがあります。
5-3. 金融機関からの融資制度
自己資金や補助金だけでは資金が不足する場合は、金融機関からの融資を検討します。政府系金融機関である日本政策金融公庫では、中小企業向けの各種融資制度(一般貸付、新事業育成資金、設備資金貸付利率特例制度など)を設けており、比較的低い金利で長期間の借り入れが可能です。取引のある民間金融機関や信用保証協会の制度も合わせて相談してみましょう。
【参考】
一般貸付|日本政策金融公庫
融資制度を探す 中小企業事業|日本政策金融公庫
設備資金貸付利率特例制度(全国版)|日本政策金融公庫
6. 設備更新で失敗しないための注意点
最後に、設備更新を成功に導くために、特に注意すべき3つのポイントを解説します。これらの点を押さえることで、投資対効果の高い設備更新を実現できます。
6-1. 更新の目的を明確に設定する
「古くなったから新しくする」という漠然とした理由だけで設備更新を進めると、導入後に「期待したほどの効果が得られなかった」という結果になりがちです。なぜ更新が必要なのか、更新によって何を達成したいのか(生産性向上、コスト削減など)という目的を明確にし、関係者間で共有することが、最適な設備選定の第一歩となります。
6-2. 複数の業者から相見積もりを取る
業者を選定する際は、必ず複数の業者から提案と見積もりを取り、比較検討しましょう。これにより、価格の妥当性を判断できるだけでなく、各社の提案内容を比較することで、自社の課題に対する多様なアプローチを知ることができます。手間はかかりますが、最適なパートナーを見つけるためには不可欠なプロセスです。
比較項目 | A社 | B社 | C社 |
---|---|---|---|
提案内容 | 課題Aに特化 | 課題A,Bを両立 | 汎用性が高い |
見積価格 | 500万円 | 550万円 | 480万円 |
サポート | 24時間対応 | 平日9-17時 | オプション契約 |
導入実績 | 業界No.1 | 中小企業に強い | 地元での実績豊富 |
6-3. 導入後の保守・サポート体制を確認する
設備は導入して終わりではありません。長期的に安定して稼働させるためには、導入後の保守・サポート体制が非常に重要です。トラブルが発生した際の対応スピード、定期メンテナンスの内容、消耗品の供給体制などを契約前に必ず確認しましょう。遠隔監視サービスなど、予知保全に繋がるサポートを提供している業者もあります。
特に古い設備では、純正部品の供給が停止している場合があります。その際、3Dプリントを用いた部品再現は有効な選択肢となり、安定稼働を支える補完策として活用できます。
7. まとめ

設備更新は、企業の競争力を維持・強化し、持続的な成長を遂げるために不可欠な投資です。本記事で紹介した進め方や注意点を参考に、現状の課題を洗い出し、明確な目的を持って計画的に進めることが成功の鍵となります。補助金やリースなどの制度も賢く活用し、自社にとって最適な設備更新を実現してください。
また、設備更新は必ずしも全面的な入れ替えだけではありません。部品単位での延命や補修に役立つ3Dプリントなど、新しい技術を柔軟に取り入れることで、コストを抑えつつ安定稼働を維持する選択肢も広がります。

設備更新や部品製作に関する具体的なご相談は、[お問い合わせページ]よりお気軽にご連絡ください。課題や状況に応じた最適なご提案をいたします。