2025.6.9
カーリングストーン軸固定具の制作|3Dプリント活用で大幅コストダウン&作業効率UP
今回ご紹介する事例は、カーリングストーンの組付工程において、作業効率を向上させるために新たに設計された「軸固定具」です。一見すると単純な小部品ですが、従来の製法では金型が必要なために少量生産には高コストが付きまとう課題がありました。こうした状況において、3Dプリント技術は小ロット対応が可能な手段として大きな効果を発揮します。
制作の背景とカーリングストーンの構造について
カーリングストーンを間近で見る機会は一般的に少ないかもしれませんが、ストーン本体と持ち手(グリップ)は中心軸を通じて「おねじ」と「めねじ」によって接続されており、グリップの破損もしくはストーンの長期使用による削れなどによる部分的な交換ができる仕様となっています。
本事例のご依頼主である一般社団法人カーリング北見様はストーンの定期的なメンテナンスを行っており、必要に応じて分解・再組立を実施しています。
組付作業上の課題:
- ストーン内部は視認できないため、ねじ込み作業は「手探り」
- ストーンの中心部に遊びが大きく、斜めに挿入されるとめねじに挿し込めない
このような課題に対して、めねじ側(グリップ側)に遊びを抑制する案内部品(軸固定具)を追加することでねじ中心を合わせやすくし、スムーズな組付けを補助するという発想が生まれました。



試作から3Dプリント化までのプロセス
はじめに、この案内部品はアルミを用いた機械加工による試作で形状・機能を検証しました。強度的にも問題なく運用できることを確認しましたが、アルミ部品の量産には金型や治具の製作が必要であり、数十個単位の小ロットではイニシャルコストがネックとなっていました。
こうした中で、カーリング北見様より「この形状なら3Dプリントで対応できるのではないか?」というご提案をいただきました。そのアイデアをもとに、FDM/FFF方式での造形に最適化された微調整と材料選定を実施。結果として、試作時と同等の性能を維持しつつ、金型不要での量産化を実現しました。
造形品と取付状態
下記は3Dプリント部品とストーン組付時の使用イメージです。今回の造形にはABS樹脂を採用しており、実用部品として十分な性能を備えています。3Dプリントの出力精度を考慮したデータ設計を行い、視認性の低い作業環境においても安定した作業性を実現しました。



3Dプリントサービス活用によるメリット
今回のように少量生産が前提となる部品においては、製造方法の選択が製品コストや納期に大きく影響します。特に、従来の金型製造や機械加工に比べて、3Dプリントサービスの活用は柔軟性と経済性に優れていることが多くの現場で確認されています。以下は、今回の部品製作における「従来製法(アルミ加工・金型製造)」と「3Dプリントサービス」との比較です。

特に今回は、数十個という小ロットでの運用を前提としていたため、金型製造による量産は現実的ではありませんでした。3Dプリントサービスの導入により、試作~本番運用までを一貫してスムーズに進められた点が大きな成果となっています。
本事例から見る3Dプリント活用のヒント
今回のように、少量生産ながらも機能性や寸法精度が求められる部品に対しては、3Dプリントの柔軟性と低コスト性が大きな強みを発揮します。特に以下のようなシーンでは、3Dプリントの導入が有効な選択肢となり得ます。
- 金型を起こすにはコストが合わない部品
- 作業効率や安全性を高める補助治具の試作・改良
- ユーザー視点のアイデアをスピーディーに形にしたい場合
- 繰り返し改良を前提とした構造や仕様検討
本事例は、カーリングという特定の競技用具における活用例ではありますが、製造現場・メンテナンス業務・設備保守など、さまざまな現場でも応用可能な考え方です。3Dプリントの導入により、これまで見過ごされてきた“ちょっとした不便”の解消や、作業現場の細やかな改善が、現実的なコストで実現可能になります。
少量生産・短納期・コスト削減といった課題に対して、3Dプリントは有効な解決手段となります。本事例が、みなさまの業務改善や製造プロセス見直しの一助となれば幸いです。3Dプリントの活用に関するご相談は、ぜひ弊社へお気軽にお問い合わせください。