今回ご紹介する事例は、旧式モデルのレンジローバーに用いられていた生産終了部品を、3Dプリントによって復元した事例です。メーカーでの生産終了により入手が困難となった部品を、単なる再現にとどまらず、実使用を踏まえた改良を加えた形で再構築しました。

制作の背景と課題

対象となった部品は、旧式レンジローバーのスピーカー部およびドア部に用いられている樹脂部品の一つでした。この部品はすでにメーカーでの生産が終了しており、国内での入手が不可能な状態となっていました。これまでは海外から調達することで対応していましたが、その供給も途絶え、今後の交換部品の入手手段が完全に失われる状況となっていました。

こうした背景のもと、次のような課題が顕在化していました。

  • すでに生産終了しており、国内での調達が不可能であったこと
  • 海外調達も困難となり、今後の交換部品の確保手段が失われたこと
  • 仮に純正部品が入手できたとしても、車両の使用年数や使用環境を考慮すると、今後も交換対応が必要となる可能性が想定されていたこと
  • 車両自体はまだ十分に使用可能であるにもかかわらず、部品欠品により維持が困難になりつつあったこと

こうした状況を受け、当社の3Dプリント受託サービスを知り、ご相談いただいたことが本件のスタートとなりました。

当社のアプローチ|単なる再現ではなく「改良」を前提とした復元

本件では、「部品をそのまま再現する」だけでは根本解決にならないと判断しました。供給問題と同時に、実使用の中で発生していた破損への対策をどう講じるかが重要なポイントでした。

そこで当社では、以下のアプローチを取りました。

リバースエンジニアリングによる設計再構築

まず現物部品をもとにリバースエンジニアリングを実施しました。3Dスキャンのためにお預かりした現物はすでに破損している状態であり、その破損箇所をもとに、局所的な補強や形状の見直しを実施。単なる形状再現ではなく、荷重のかかり方や取り付け構造を踏まえた設計検証を行い、実使用を前提とした形状再構築を行いました。

高耐久素材ONYXの採用

素材には、Markforged社のONYX(ナイロン系CFRP複合材料)を採用しました。ONYXは以下の特長を持ち、本用途に適した材料です。

  • ナイロンベースによる靭性と耐衝撃性
  • 炭素繊維微粒子による高剛性・高寸法安定性
  • 車両内装部品に求められる耐久性と耐熱性の両立

これにより、純正部品と同等の形状互換性を確保しつつ、耐久性を意識した代替部品として再構築することが可能となりました。

完成品と仕上がり

完成した部品は、外観・取り付け寸法ともに純正部品と同等の互換性を確保しつつ、内部構造については耐久性を意識した補強設計を反映しています。

実車両への組み付け後も、

  • 取り付け精度に問題なし
  • 取付状態が安定していることを確認
  • 使用上の違和感なし

という結果が得られ、少なくとも取付状態として問題なく機能する形での復元が実現しました。なお、本部品は純正部品ではなく代替部品として製作しており、最終的な使用可否についてはお客様と協議の上でご判断いただいています。

3Dプリント活用によるメリット

本事例から見える、3Dプリント活用のメリットは次の通りです。

  • 生産終了部品でも再現・再供給が可能
    メーカー供給が終了した部品であっても、現物があればリバースエンジニアリングにより再製作が可能です。特に旧式車両・特殊車両・産業機械など、部品供給がネックとなる分野で大きな価値を発揮します。
  • 単なるコピーではなく「用途に即した設計最適化」が可能
    3Dプリントは、単なる複製に留まらず、破損が発生していた部位への補強や形状調整などの実使用に即した設計修正を柔軟に反映できる点が大きな強みです。
  • 小ロット・1点ものでも現実的なコストで対応可能
    金型を必要としないため、1点からでも対応可能です。「1台の車両のためだけに部品を作る」というケースでも、現実的なコストで成立します。

本事例から見る応用可能性

本件は旧式レンジローバーの部品復元事例ですが、同様の考え方は以下の分野にも応用できます。

  • 生産終了となった産業機械・設備部品の再製作
  • 旧式車両・クラシックカーの補修部品対応
  • 海外調達に依存していた特殊部品の国内内製化
  • 純正部品の弱点を補う改良型代替部品の開発

単なる代替ではなく、「より使いやすい形で再構築する」という選択肢を提供できるのが、3Dプリント × 設計技術の価値です。

お問い合わせ

今回の事例は、「生産終了部品が入手できず困っている」「車両はまだ使えるのに、部品欠品が原因で維持に支障が出ている」といった課題に対し、3Dプリントとリバースエンジニアリングが有効な解決策となることを示す一例です。生産終了部品の復元、設計改善を含めた代替部品製作、小ロット・1点対応など、お困りの際はぜひ当社にご相談ください。

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