今回ご紹介するのは、スポーツカーにアクションカメラを取り付けるための専用固定具を、3Dプリントによって製作した事例です。両面テープによる接着を前提とした純正アタッチメントのスライド取付構造を再現しながら、結束バンドを直接通せる仕様へ変更しました。さらに、複数回の試作と寸法調整を行うことで、純正品と同等のスライド操作感と、装着後にがたつきのない保持状態を実現しています。

製作の背景と課題

対象となったのは、スポーツカーにアクションカメラを取り付けるためのアタッチメントです。純正アタッチメントは、裏面の両面テープを使って車両へ接着する仕様となっていました。しかし、走行中に振動や衝撃が発生するスポーツカーでは、接着のみによる固定では脱落が懸念されるため、依頼者は結束バンドによる固定を採用していました。
これまでは、純正アタッチメントに結束バンドを組み合わせて車両フレームへ固定していましたが、純正品は結束バンドの使用を前提とした形状ではありません。そのため、取り付け方が安定せず、希望する位置へ確実に固定しにくいという課題がありました。

こうした背景のもと、次のような要件がありました。

  • 結束バンドを直接通し、車両フレームへ固定できる構造とすること
  • 純正品と同等のスライド操作性を確保すること
  • 振動や衝撃が想定される用途を考慮して材料を選定すること

そこで、純正アタッチメントのスライド取付構造を再現しながら、結束バンドを直接通せる専用アタッチメントを3Dプリントで製作することとなりました。

当社のアプローチ|純正の操作性を維持した固定方法の変更

本件では、純正アタッチメントの現物をお預かりし、採寸による3Dデータの作成から試作、嵌合調整、最終造形まで一貫して対応しました。

1. 現物採寸によるスライド固定形状の再現

まず、純正アタッチメントを採寸し、その寸法をもとに3Dデータを作成しました。今回は3Dスキャナーを使用せず、カメラ側の取付部品を装着するスライド部や、純正アタッチメント底面の曲面など、必要な形状を現物から測定しています。
カメラ側の取付部品をそのまま使用できるよう、純正アタッチメントのスライド取付構造を再現しつつ、3Dプリント製アタッチメントの側面には2本の結束バンドを通すための通し穴を追加しました。これにより、カメラ側の部品の着脱方法を変えることなく、車両フレームへの固定方法だけを変更しています。

2. 複数回の試作によるスライド固定部の調整

スライド固定部は、寸法がわずかに異なるだけでも、差し込みにくさや装着後のがたつきにつながります。また、3Dデータ上の寸法をそのまま造形しても、3Dプリンターの造形精度や材料の特性によって、現物との間に差が生じる場合があります。 そこで、実際にカメラ側の取付部品をスライド部へ着脱しながら、複数回の試作と寸法調整を実施しました。その結果、純正品と同等のスライド操作感と、装着後にがたつきが生じない保持状態を実現しました。

3. 高剛性・高靭性素材ONYXの採用

材料には、Markforged社のONYXを採用しました。ONYXは、短繊維カーボンを配合したナイロン系複合材料で、剛性と靭性のバランスに優れています。今回は、走行中に振動や衝撃が発生するスポーツカーへの搭載を前提としているため、こうした使用環境を考慮し、実用部品に適した材料としてONYXを選定しました。

完成品と取付確認

完成した3Dプリント製アタッチメントについて、カメラ側の取付部品との嵌合状態と、結束バンドによる車両フレームへの取付状態を確認しました。

完成後は、次の項目を確認しています。

  • カメラ側の取付部品を問題なく着脱できること
  • スライド固定後にがたつきがなく、適切に保持されること
  • 2本の結束バンドを使用して、車両フレームへ締結できること

実際の車両でも、希望する位置にアクションカメラを設置できることを確認しました。なお、激しい振動下における長期的な耐久性については、今後の使用を通じた確認が必要です。ただし、結束バンドを3Dプリント製アタッチメントへ直接通せる構造としたことで、従来の取付方法と比べて固定状態の安定化が期待できます。

3Dプリント活用によるメリット

本事例から見える、3Dプリント活用のメリットは次の通りです。

  • 既製品の機能を活かした仕様変更が可能
    既製品が備える必要な機能を活かしながら、固定方法など必要な部分だけを使用環境に合わせて変更できます。
  • 試作を重ねながら現物に合わせた調整が可能
    3Dプリントは金型を必要としないため、市販品では対応しにくい専用部品を、1点から製作できます。
  • 1点のみの専用部品でも製作可能
    3Dプリントは金型を必要としないため、市販品では対応しにくい専用部品を、1点から製作できます。

本事例から見る応用可能性

本件はスポーツカー用アクションカメラ固定具の製作事例ですが、同様の設計手法は、既製品の取付方法が使用環境に合わない場合や、専用の固定部品が必要となるさまざまな用途に応用できます。

  • パイプ径や曲率、取付位置に合わせた車両用アタッチメント
  • カメラやセンサー、計測機器などの機器固定具
  • 接着やねじ止めが難しい場所へ機器を設置するための専用部品
  • 既製品の機能を活かし、固定方法を使用環境に合わせて変更したカスタム部品

今回は純正アタッチメントの底面にある曲面形状を踏襲しましたが、取付対象となるパイプやフレームの直径・曲率が分かれば、その形状に合わせて設計することも可能です。また、今回製作したアタッチメントの使用状況を確認したうえで、ほかのスポーツカーへの展開も検討されています。

お問い合わせ

今回の事例は、「市販の固定具では希望する位置に取り付けられない」「既製品の機能を活かしながら、固定方法だけを変更したい」といった課題に対し、3Dプリントと設計技術が有効な解決策となることを示す一例です。当社では、現物の採寸による3Dデータ作成から試作、嵌合調整、最終造形まで一貫して対応しています。専用の固定具やアタッチメント、1点のみのカスタム部品などでお困りの際は、ぜひ当社にご相談ください。

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