部品試作の段階で手戻りが多く、開発コストや期間の増加に悩んでいる方も多いのではないでしょうか。この記事では、部品試作の目的から量産との違い、手戻りを防ぐ具体的な手順までを解説します。読み終わる頃には、3Dプリンターを活用した効率的な試作手法や、自社に合った外注先の選び方が分かるようになります。部品試作を成功させるには、目的の明確化と最適な工法選びが重要です。本記事を参考に、スムーズな製品開発の体制を整えましょう。

1. 部品試作が開発に必要な理由は?

部品試作は製品開発において欠かせないプロセスです。試作を行わずにいきなり量産に進むと、後から重大な問題が発覚するリスクが高まります。ここでは、部品試作が開発に必要な主な理由を解説します。

1-1. 設計の不具合を早期に発見する

部品試作を行う主な理由のひとつは、図面上では気づきにくい設計の不具合を早期に発見できる点です。画面上の3DCADデータだけでは、実際の部品同士の干渉や組み立てやすさまで完全に把握することは困難といえます。
具体的には、試作品を手に取って組み合わせることで「想定より部品の隙間が狭い」「ネジ回しのスペースが足りない」といった物理的な問題を見つけられます。早い段階で試作を行い、現物を確認することが、量産前の設計修正を可能にし、結果的に大きな損失を防ぐことにつながります。

1-2. 顧客のニーズを事前に検証する

もう一つの理由は、顧客が求めるニーズを満たしているか事前に検証できる点です。製品の使い勝手やデザインの質感は、現物を見ないとターゲット層に受け入れられるか判断しにくい部分があります。
例えば、新しい家電製品を開発する際は、デザインモックアップ(外観試作)を作成してユーザーテストを実施します。サイズ感や持ちやすさ、外観デザインを実際に確認してもらうことで、顧客のリアルな声を集めることが可能です。試作品を通じたフィードバックを設計に反映させることが製品の市場競争力を高める鍵になります。

2. 試作と量産における違いとは?

部品試作と量産は目的が異なるため、用いられる手法や考え方にも明確な違いがあります。試作は検証が主な目的ですが、量産は同じ品質のものを安定して製造することが求められます。それぞれの違いを具体的に見ていきましょう。

項目試作量産
主な目的設計の検証、機能の確認市場への安定供給、利益の確保
加工方法3Dプリンター、切削加工、簡易金型など本金型による射出成形、プレス加工など
使用材料代替材や試作専用の樹脂・金属製品仕様に準じた最終的な量産材料
製造単価小ロットのため一個あたりの単価が高い継続生産・一定数量の製造により一個あたりの単価を抑えやすい

2-1. 製造工法や使用材料が異なる

試作と量産では、製造にかける工法や使用する材料が変わることが一般的です。量産では本金型を用いた射出成形やプレス加工などが主流ですが、金型の製作には時間と多額の費用がかかります。そのため試作段階では、金型が不要な切削加工や3Dプリンター、あるいは本金型より安価・短納期で作れる簡易金型を選択されることが一般的です。
最終的に金型で作るプラスチック部品であっても、初期の形状確認の段階では、量産時とは異なる樹脂材料を用いて3Dプリンターで試作を行うことが一般的です。段階と目的に応じて柔軟に工法や材料を切り替えることが、効率的な開発を進めるうえで大切です。

2-2. 一個あたりの製造単価が異なる

部品一個あたりの製造単価も、試作と量産で大きく異なります。量産品は継続的に一定数量を製造するため、金型の初期費用を分散でき、一個あたりのコストを安く抑えることが可能です。一方で試作品は数個から数十個といった小ロットで作られるため、準備にかかる費用がそのまま単価に乗り、割高になります。
量産時には数十円〜数百円で製造できる部品が、試作では数千円〜数万円に達するケースもあります。そのため、試作の単価が高いことを前提に必要な数だけを適切な工法で発注する予算管理が求められます。

3. 段階別に行うべき試作の種類とは?

段階別に行うべき試作の種類とは?

製品開発の工程において、試作は一度で終わるものではありません。開発の進捗に合わせて、確認すべきポイントが変わるからです。ここでは、段階別に行うべき3種類の試作について解説します。

試作の段階試作の名称主な検証目的
開発初期デザインモックアップ外観のデザイン、サイズ感、アイデアの具現化
開発中盤機能試作強度、耐久性、可動部の動作、熱や環境への耐性
開発終盤量産試作(プレ量産)量産ラインの検証、品質の安定性、組み立て作業性

3-1. アイデアの実現性を確かめる

開発の初期段階では、アイデアが形として成り立つかを確認するための試作を行います。これはデザインモックアップと呼ばれ、主に外観やサイズ感を確認するために行われます。
例えば、新しい形状のスマートフォンを考案した際、まずは安価な樹脂で画面の大きさや持ちやすさだけを確認できるモックアップを作ります。内部の精密な基板などは搭載しません。早い段階で目に見える形を作ることで、関係者間でのイメージ共有をスムーズに行うことが目的となります。

3-2. 製品の強度や耐久性を検証する

設計が進み内部構造が固まってきた中盤では、製品の強度や耐久性を確かめる「機能試作」を実施します。ここでは、実際の使用環境を想定して、可動部の動きや熱に対する耐性などを細かくテストしていく段階です。
具体的には、自動車のドアノブを開発する際は、想定使用回数に応じた開閉テストを繰り返し、部品の破損や強度低下が起きないかを確認します。量産に近い条件でテストを重ねることで、市場に流通した後の製品トラブルを未然に防げます。

3-3. 量産に向けた最終確認を行う

開発の最終段階では、量産に向けた最終確認である「量産試作」を行います。これは、本番と同じ材料や製造ラインを使い、問題なく量産できるかを検証する工程です。
射出成形機を用いてテスト生産を行い、成形時の不具合(樹脂のヒケや反りなど)が発生しないか、作業員が組み立てやすい構造になっているかを確認します。量産試作は品質のばらつきを抑え、工場の生産効率を高めるための重要な最終チェックとなります。

4. 手戻りを防ぐ部品試作の手順

行き当たりばったりで試作を進めると、何度もやり直しが発生し、時間とコストを無駄にしてしまいます。手戻りを防ぐためには、正しい手順を踏んで進めることが重要です。具体的な4つの手順を順番に解説します。

手順実施内容手戻りを防ぐためのポイント
1.目的の設定検証したい項目(デザイン、機能、量産性など)を決定する関係者全員で目的を共有し、過剰な要求を避ける
2.加工方法の選択目的と予算に応じた最適な工法(3Dプリンター、切削など)を選ぶ各工法の特徴を理解し、納期と精度のバランスを見る
3.試作品の製作自社設備または外注を利用して現物を形にする外注時は図面だけでなく、重視する要件を正確に伝える
4.設計への反映試作品を評価し、不具合の要因を設計データに修正する感覚ではなく、寸法などの客観的なデータに基づいて修正する

手順1:試作の目的を設定する

最初にすべきことは、今回の試作で何を検証したいのかという目的を明確に設定することです。目的がブレてしまうと、過剰な精度を求めたり、逆に必要な強度を満たさなかったりする原因になります。
「デザインの確認だけなのか」「実際の動作テストを行いたいのか」を開発チーム全体で共有しておく必要があります。 外観の確認だけであれば色味や表面の質感を重視しますが、動作テストなら寸法の精度が重要になります。優先して検証したい項目を明確にすることで、無駄な工程を省き効率的な試作ができます。

手順2:最適な加工方法を選ぶ

目的に合わせて、最適な加工方法を選択します。加工方法によって、得意な形状や使用できる材料、かかるコストが異なります。
具体的には、高い寸法精度が求められる金属部品の試作であれば「切削加工」を選び、複雑な内部構造を持つ樹脂部品を素早く確認したい場合は「3Dプリンター」を選ぶといった具合です。各工法の強みと弱みを理解し、求める品質や予算に合った手段を見極めることが、手戻りを減らすポイントになります。

手順3:試作品を実際に製作する

加工方法が決まったら、設計データをもとに試作品を製作します。自社に設備がある場合は内製し、難しい場合は専門の加工業者へ外注します。外注する際には、図面だけでなく「どこに重点を置いて作ってほしいか」という意図を明確に伝えることが大切です。
例えば、「この穴の寸法は厳密に守ってほしいが、表面の仕上げは粗くて構わない」といった具体的な指示を出すことで、意図に沿わない試作品が上がってくるリスクを大幅に下げられるでしょう。

手順4:改善点を設計に反映する

試作品が完成したら、当初設定した目的に沿って評価を行い、改善点を設計データに反映させます。ただ「良かった」「悪かった」で終わらせず、なぜ不具合が起きたのかを分析することが求められます。
組み立て時に部品が干渉したという問題があれば、CADデータに戻って公差(許容できる誤差の範囲)を見直し、隙間にゆとりを持たせるような修正が必要です。評価結果を客観的なデータとして設計にフィードバックするサイクルを回すことが、製品の完成度を高めます。

5. 部品試作における3Dプリンターの活用のメリット

部品試作における3Dプリンタの活用のメリット

近年、部品試作の現場で3Dプリンターの活用が急速に進んでいます。従来の加工方法にはない独自の強みがあり、開発プロセスを大きく変える可能性を秘めています。ここでは、3Dプリンターを活用する4つのメリットを解説します。

比較項目3Dプリンター切削加工射出成形(金型)
初期費用低い(金型不要)低い(金型不要)高い(金型製作が必要)
リードタイム短い中程度長い
形状の自由度高い制約あり制約あり
小ロット対応得意得意不向き

5-1. 初期コストを削減できる

大きなメリットは、金型などの初期コストを大幅に削減できる点です。切削加工や射出成形では、専用の治具や金型を準備するための費用が重くのしかかります。 一方で3Dプリンターは、3DのCADデータさえあれば、直接材料を積み重ねて造形することが可能です。例えば、数十万円~数百万円以上かかる金型費をかけずに、比較的低コストで試作品を製作できるケースもあります。高額な初期投資を回避できるため、予算が限られたプロジェクトでも気軽に試作を行えます。

5-2. 設計~製作~評価を短いスパンで回すことが可能

開発のサイクルを高速化できることも大きな強みです。従来の加工では、業者への見積もりから納品までに数週間かかる場合もあります。しかし、自社に3Dプリンターがあれば、夕方に設計データを出力設定しておけば、小型部品であれば翌日には試作品が完成する場合もあります。
具体的には、設計者が「データ作成→翌日プリント→その場で組み付け評価→即座にデータ修正」という工程を数日のうちに何度も繰り返すことが可能です。そのため、現物ベースで試作と改善のサイクルを高速に回す体制を整えられます。

5-3. 形状の自由度が高い

3Dプリンターは、従来の加工法では実現が難しかった複雑な形状も比較的容易に造形できます。刃物を当てて削り出す切削加工では、刃が届かない内部流路や、複雑に曲がりくねった配管構造を作ることは物理的に困難です。
例えば、軽量化のために内部を網目状(ラティス構造)にした部品を出力できるだけでなく、これまで複数に分けて製造・組み立てしていた構造を、一つの部品として一体造形することも可能です。これにより、大幅な「部品点数の削減」が期待できます。
部品点数が減ることで、組み立て工数や在庫管理のコストを削減できるだけでなく、ネジ止めや溶接などの接合部が減ることで、強度向上や軽量化につながる場合があります。

5-4. 小ロット多品種の試作にも対応可能

少しずつ形の違う部品を同時にいくつも作りたい場合にも、3Dプリンターが適しています。金型を使う場合は、形状が一つ変わるたびに新しい金型が必要になり、多額のコストがかかります。
具体的には、サイズやデザインの異なる3種類のケース部品を評価したい場合、3Dプリンターの造形エリア内であれば、3つの異なるデータを一度に並べて同時に出力することが可能です。多様なバリエーションを一度に比較検討したい小ロット多品種の試作において、高い効果を発揮します。

さらに、このメリットは試作段階にとどまりません。近年では造形精度や材料の耐久性が向上しており、小ロット多品種の試作で評価したデータをそのまま用いて、小ロット生産へ移行することも可能になってきています。金型レスの強みを活かし、試作から小ロットの量産までシームレスに対応できる点も大きな魅力です。

6. 3Dプリンターを部品試作に活用した事例

部品の試作において、3Dプリンターを活用する企業が近年増えてきています。従来の切削加工や簡易金型と比較して、短納期かつ低コストで形状確認ができるためです。ここでは、実際の開発現場でどのように3Dプリンターが使われているのか、具体的な事例を詳しく解説します。

6-1. 電子部品用ケースを3Dプリンターで試作

電子機器の開発において、ケース部品を3Dプリンターで試作すれば開発スピードを高められます。具体的な流れは以下の通りです。

  1. まず、CADソフトウェアで作成した3Dデータをもとに、ケースの試作品を造形します。
  2. 次に、内部に配置する基板やコネクタの干渉、配線取り回しを現物合わせで検証します。
  3. 組み立てや配線に不具合が見つかった場合は3Dデータを修正し、必要に応じて再造形を繰り返して精度を高めます。
  4. 設計が確定した段階で、金型を用いた量産フェーズへと移行します。

このように3Dプリンターを活用することで、設計の検証から修正までを短いサイクルで繰り返せるため、量産前の手戻りを抑えながら開発スピードを高められます。

6-2. 廃盤部品の代替部品を3Dプリンターで試作

代替部品を製作する際も、まず試作品を作成して形状や取付性を確認します。生産が終了し入手困難となっていた旧式レンジローバーの内装部品を、3Dプリンターで復元した事例をご紹介します。対象の樹脂部品は現物がすでに破損していたため、リバースエンジニアリングを用いて形状を再構築しました。その際、単なる複製に留めず、荷重のかかり方などを考慮して局所的な補強を行っています。
素材にはナイロン系の複合材料を採用しており、車両部品に求められる耐久性や耐熱性を持たせました。金型が不要な3Dプリンターを活用するため、一つからの製作であっても現実的なコストで代替部品を用意できます。

7. 失敗しない外注先選びの基準は?

試作部品の製作を外部に依頼する場合、外注先の選び方がプロジェクトの成否を分けます。単に価格が安いだけで選んでしまうと、品質が伴わず結局やり直しになることも少なくありません。失敗しないための2つの基準を解説します。

評価基準確認すべきポイント確認を怠った場合のリスク
加工技術と設備求める材質・寸法精度に対応できる設備があるか精度不足により、正しい検証ができずやり直しになる
量産を見据えた支援量産時の加工性やコスト削減のアドバイスがあるか試作品はできても、量産化の段階で設計変更を余儀なくされる

7-1. 必要な加工技術を持っているか

第一の基準は、自社が求める材質や精度を実現できる加工設備と技術を保有しているかという点です。試作会社と一口に言っても、「樹脂の3Dプリントが得意な会社」や「金属の精密加工に特化した会社」など、得意分野は大きく異なります。
例えば、航空機部品のように高い寸法精度が求められる金属部品の試作を、設備が整っていない簡易試作メインの業者に依頼しても、求める品質は得られません。自社の試作目的と合致した設備環境や、熟練の技術者が在籍しているかを事前に確認することが重要です。

7-2. 量産を見据えた支援があるか

第二の基準は、試作だけでなくその先の量産までを見据えたアドバイスをもらえるかという点です。
具体的には「この形状だと金型で成形する際に不良が出やすいので、少し厚みを持たせた方が良い」といった、量産時のリスクを予見した提案をしてくれる業者を選ぶのが理想です。設計段階から製造業の知見をもって伴走してくれるパートナーを選ぶことが、開発全体の手戻りを減らす秘訣となります。

8. まとめ

部品試作は、設計上の不具合や組み立て作業性の課題を量産前に発見し、手戻りや開発コストの増加を防ぐために重要な工程です。試作にはデザインモックアップ、機能試作、量産試作などの段階があり、それぞれ確認すべき内容が異なります。試作を成功させるためには、目的を明確にしたうえで、適切な加工方法や材料を選択し、評価結果を設計へ反映していくことが重要です。
こうした試作工程の中で、3Dプリンターは短納期かつ低コストで試作品を製作できる有効な手段の一つです。形状確認や組付け検証を素早く行えるため、設計変更を繰り返しながら製品の完成度を高めることができます。また、小ロット多品種の試作や代替部品の検証にも活用できるため、開発期間の短縮やリスク低減にもつながります。

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